ついにこの日がやってきた。シーズン半ばまでに11ゴールを決めていた田口裕也が、夏のウインドーが閉まる直前に、ＦＣ岐阜と同じＪ３に属するツエーゲン金沢へと移籍。期限付き移籍ならば対戦時に出場出来ないよう契約を結ぶことも出来るが、今回は完全移籍であるため、田口は岐阜との試合にも出場可能になる。このＪ３第30節が、両クラブに分かれての再会となるのは、あらかじめわかっていたことだった。

田口は８月24日の第25節ＦＣ琉球戦で金沢の選手として初出場。以降５試合連続で先発出場を果たしているが、いまだにゴールはない。夏の移籍で加入した選手がすぐに結果を残すこと、あるいは新しい選手を組み込んだチームを成功させることは、決して容易ではない。チーム改造に取り組んでいる金沢が直近の５試合で２分３敗なら、岐阜は第25節でＹ．Ｓ．Ｃ．Ｃ．横浜に勝利を収めたあとに３連敗。苦しむ者同士、どちらが先に結果を残すのかという勝負になる。

チーム内トップスコアラーだった田口の流出はたしかに痛手。しかし岐阜にも意地がある。現在はイ ヨンジェを１トップに、新垣貴之や西谷亮などを２シャドーに据えた攻撃陣で熟成を進めている。現在所属する選手の力で勝てるのだというところを示さなければならないし、なにより前節、ギラヴァンツ北九州に敗れたことによって、今シーズン３度目の３連敗を記録してしまった岐阜としては、不名誉な記録の更新を避けるためにも、なんとしても負けられない。

ただ、容易に勝てる相手ではない。今シーズン序盤に４バックから３バックへと切り替えた金沢は、田口の得点こそないものの、２シャドーが好調だ。自由契約選手となっていた

西谷和希が第27節ＹＳ横浜戦で移籍加入後の初ゴールを決めれば、２年続けてＦＣ東京から育成型期限付き移籍中の梶浦勇輝が第25節ＦＣ琉球戦と第26節ＦＣ大阪戦でゴールを決めて、今シーズンは８点を記録している。

ともに勝利を渇望していることは間違いない。ならばホームの大声援で選手たちの背中を押し、自分たちのほうが勝利への意欲が強いのだということを示すのみ。今節こそ『ＨＹＰＥＲ ＣＨＡＮＴ』を歌うべく、スタジアム一丸となって闘いたい。

（Text by 後藤勝）